「愛と憎しみの果てに」(18禁)
第2話「ヒミツのビデオ」



「――花組隊長の大神一郎です。かえでさん、よろしくお願いします」



『かえでさん』…ですって?

軍人のくせに初対面の女を馴れ馴れしく呼ぶなんて軽い男ね。

こんなヤツが士官学校を首席で卒業した男?海軍もたいしたことないわね。



「わからないことがあったら、俺か花組に聞いてくださいね」



大神は私が姉さんとあまりにそっくりだから驚いてるみたいだった。

ふーん、そう…。その優しそうな笑顔で箱入り娘のあやめ姉さんをたぶらかしたってわけ…。

でも、私はだまされないわよ!私は姉さんとちがって簡単に人を信用しないの。この私をオトせると思ったら大まちがいなんだから…!!



「寝室はここを使って下さい。あやめさんが使っていた部屋ですから…」



――ここがあやめ姉さんの部屋ね…。

私はダンボールから荷物を出して、そのダンボールにあやめ姉さんの遺品を詰めて整理する。

…これ、姉さんのお気に入りだった和服だわ。実家でよく着ていたっけ…。

どの服にもまだ、あやめ姉さんのぬくもりが残っている…。

部屋にもまだ、姉さんの好きだったお香の匂いが残っている…。



「ぐす…っ、姉…さん…」



どうして先の戦いであやめ姉さんだけ死ななければならなかったの…?他のヤツらはみんな生きて戦場から戻ってきたというのに…。

……どうして私の姉さんだけ死ななければならなかったの?



「――あやめさん、今日かえでさんが来てくれましたよ。あやめさんの分まで帝撃でがんばるからって…」



就任の挨拶が終わって部屋に戻ろうとすると、あいつが…大神が真っ暗な部屋の隅っこで一人ぼっちで泣いていた。

あやめ姉さんと自分の2ショット写真が入った写真立てを抱きしめて、誰にも気づかれないようにひっそりと涙を流していて…。



……男がうじうじと…情けないったらありゃしない…。どんなに泣いたって姉さんは帰ってきやしないのに…。



表向きはもぎりの仕事も隊長任務もこなす真面目な花組隊長。けど、裏ではあやめ姉さんを洗脳して2度も孕ませた鬼畜。

……どうせあの涙も演技に決まってるわ。私は騙されないわよ!

絶対あの男を殺して、姉さんの仇を取ってやるんだから…!!



私は小刀を太もものベルトに忍ばせて、大神が寝静まるのを待った。

殺人罪で処刑されたってかまわない。アイツを殺すことで姉さんの無念を晴らせるなら…。天国で少しでも姉さんが浮かばれるのならそれで…。



私は壁に耳を立てて、隣の部屋のヤツの様子をうかがってみる。

…カリカリとペンで何かを書く音がするわ。きっと米田司令に言われて戦闘の作戦でも考えているんでしょうけど。

……まだしばらく寝ないみたいだわ。深夜まで待つとしましょう…。



『――ああああああ〜んっ!!はぁっはっはっはあああんっ…!!イイ〜っ!!』



しばらくして、隣の隊長室から女の喘ぎ声が聞こえてきた。



『――ああああん!!そこはらめぇ!!らめっらっればぁ〜!!』



快感にろれつが回らなくなっているのだろう。雌犬のようなはしたない嬌声が私の部屋の壁に反響してくる…。

あやめ姉さんが死んだばかりだというのに…もうちがう女を連れ込んでるなんて…!!絶対に許せないわ…!!



『――あぁ〜っ、大神く〜ん!!もっと私をめちゃめちゃにしてぇ〜!!』



え…っ!?この声はあやめ姉さん…!?

で、でも姉さんは死んだはず…。でも、私が姉さんの声を聞きまちがえるはずないもの!

性欲が満たされる時に出るこの獣じみた喘ぎ声…、確かにあやめ姉さんだわ!!どういうことなの…!?



『――んふふっ!中に出したばっかりなのにもうこんなにしちゃって…。いけない子ね、大神くんは』



「あやめさん、その口で俺のをまた…。――う…っ、うぅぅうう…っ!!」



隊長室をそっとのぞいてみると、大神は蒸気ビデオカメラの映像を蒸気テレビジョンにつないで再生していた。

大神が座っている周りには丸められて捨てられたティッシュの山…。

どうやらビデオに残っているあやめ姉さんのハメ撮り映像をオカズにオナニーに耽っているらしい。



『きゃああっ!!結合部をアップにしちゃダメェ〜ッ!!』

『なんでですか?俺とSEXしてるあやめさん、こんなにきれいなのに…』

『だってはずかしいじゃない。こんなビデオ、誰かに見られたりしたら…』

『誰にも見せませんよ。あやめさんの痴態は俺だけのものですからね』

『ふふっ、副司令をハメ撮りするなんて本当なら処罰されるわよ?』

『そう言うあやめさんも副司令のクセにこんなに感じてるなら始末書ですね』

『あああん!ふふふっ、じゃあお互い様ってことで…このことは2人だけのヒミツね?』

『了解!明日はこれ見ながらヤリましょうね、あやめさん』

『はああ〜ん!考えるだけでゾクゾクしてきちゃう!――ふふふっ!大好きよ、大神くん…』



ビデオはそこで途切れると、あやめ姉さんの自分撮りからまた再生が始まった。



『ふふっ、大神くんの可愛い寝顔でーす。いつも恥ずかしいところ撮られてばっかりだから今日はお返しよ!』



ビデオの中の姉さんは隣で寝ている大神の寝顔を撮りながらクスクス笑っている。



『幸せ…。時間が許す限り、こうして大神くんを見てたいな…。――ビデオを編集中の大神くんへ。私と真剣にお付き合いしてくれるのはうれしいけど、ハメ撮りに凝りすぎてお仕事をサボっちゃダメよ?一緒の時間を大切にしていきたいのは私も同じ。だから、ゆっくり私たちの愛を育てていきましょう。これからもずっとそばにいてね。愛してるわ、大神クン…』



「〜〜う…っ、あやめさん…。うっ、うぅぅぅ……!」



大神は触れたくても触れられないビデオの中のあやめ姉さんに手を伸ばしながら小さい子のように涙と鼻水がぐしゃぐしゃの顔で泣いている。



まだこのビデオを撮っている最中はあやめ姉さんも知らなかっただろう。このあと、自分はまもなく死んでしまうなんて…。この幸せがこんなに早く終わりを迎えるなんて…。



「あやめさん、俺もう限界です…。あなたに会いたくて頭がおかしくなりそうだ…。死んで…あなたのもとへ逝ってしまいたい…!」



大神が電気をつけると、部屋の全貌が明らかになった。その隊長室の異様さに私は目を疑った!

軍服で仕事する姉さん、華道をたしなむ姉さん、大神とH中の姉さん…、いろんなあやめ姉さんの写真が引き延ばされてポスターになったものが大神の部屋の壁に隙間なく貼られていたのだから…!!



「――誰だ!?」

「ひいっ!?」



気配を感じて振り返った大神とついに目が合ってしまった…!

早く逃げないと…!!で、でも足がすくんじゃって…。



「かえでさんでしたか…。――見てしまったんですね…?俺とあやめさんの秘密を」

「ひいいっ!!きゃああああーっ!!」



大神はイッちゃってる目で私ににらみをきかすと、足がもつれて転んだ私をパワーボムでベッドに沈めた。



「もうこんなに濡らして…。淫らなお姉さんを見てムラムラしちゃったんですね?その体、俺がなぐさめてやりますよ」

「うそっ!?いやあああっ!!やめてえええええーーーーっ!!」



あやめ姉さんに捧げるはずだった処女の花弁が仇によって散らされるまでのカウントダウンが始まった…。




第3話へつづく


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